隣の席がすっと空いた。
課長に従って、同僚が部屋を出て行く。
ヘッドホンをつけたまま、後ろ姿を見る。
「また・・・」と思った。
電電公社職員。
電話交換手、34歳。
4月1日、日本電信電話株式会社となる。
その民営化への移行を控えてか、職場ではしばらく前から「打診」がふえていました。
子供が幼くて夜勤、宿直が出来ないでいる女性交換手が対象。
管理職から「ローテーションに入ってほしい」という要請だ。
断っても執拗に。
「どうだった?」。
昼休みの控室で、やっと戻ってきた同僚に彼女は聞いた。
「『これまでは、公社があなたの都合に合わせて来た。今度は、あなたが協力してくれる番だ』って」
「それで?」
「断った。でも、また言われる・・・。辞めるしかないのもしれない」今度は同僚が彼女に聞く。
「あなたのところ、下の子いくつになった?」
「3つ」
「じゃ、まだ呼ばれないかな。うちは5つになったから・・・。課長は『もう、ずいぶんしっかりしてるでしょう』なんて言ってた」
呼ばれる、呼ばれない、は子供の年齢で分かれているみたいでした。
線引きは4~5歳か。
「遅かれ、早かれ」と、友人は思ったのです。